月影に咲く、一輪の華


その瞬間だった。

――バァンッ!!

倉庫の扉が、ものすごい勢いで蹴り開けられた。

黒羽「……っ!」

豹牙「何だ!?」

男たちが一斉に雪崩れ込んでくる。

数人――いや、十人近い。

來夢「おいおい……!」

黒羽「全員、構えろ!!」

叫ぶと同時に、黒羽が先頭の男へ突っ込んだ。

ドガッ!!

拳が頬を捉える。

男がよろめいた瞬間、黒羽が肩を掴んで引き寄せ、膝を叩き込む。

黒羽「どけぇ!!」

その横から別の男が襲いかかる。

豹牙「黒羽!」

豹牙が横から飛び込み、男の拳を腕で受け止める。

豹牙「……っ、重ぇな!」

そのまま腕を振り払い、拳を叩き込む。

バキッ!

男が吹き飛ぶ。

けれど、すぐ後ろから別の男が豹牙へ飛びかかる。

豹牙「……チッ!」

振り返った瞬間――。

ドゴッ!!

腹に拳が入った。

豹牙「……っ!」

身体がくの字に折れる。

來夢「豹牙!!」

來夢が男の顔面へ蹴りを入れる。

來夢「俺の仲間に何してんだよ!!」

男が倒れる。

しかし次の瞬間、左右から二人が來夢へ襲いかかった。

來夢「……っ!」

朔夜「來夢!」

朔夜が一人の腕を掴んで投げ飛ばす。

ドンッ!!

朔夜「数が多すぎる……!」

夜凪は無言のまま、向かってきた男の拳を紙一重で避ける。

そのまま懐へ入り込み――。

ドッ!

腹。

バキッ!

顎。

男が崩れ落ちる。

夜凪「……」

その直後、背後から別の男。

夜凪「……っ!」

振り返るより早く、肩を掴まれる。

夜凪「離せ!」

身体を捻り、肘を叩き込む。

男の手が緩んだ瞬間、夜凪が振り返る。

だが――。

ドガッ!!

別の男の蹴りが夜凪の脇腹を直撃した。

夜凪「……っ!」

吹き飛ばされ、床を滑る。

星羅「夜凪……!」

思わず声が出る。

けれど――。

その瞬間、男たちの視線が一斉に星羅へ向いた。

男「……見つけた」

星羅「……っ」

身体が強張る。

星夜「姉ちゃん!!」

星夜が星羅の前へ出る。

星夜「近づくな!」

男が星夜へ拳を振り上げる。

星羅「星夜!!」

星羅は咄嗟に星夜を庇う。

ガシッ!

男に腕を掴まれた。

星羅「離して!」

必死に振りほどこうとする。

男「やっと会えたね、星羅ちゃん」

星羅「……っ」

その声、その目間違いない。

星羅「……あなた……」

男「ずっと探してた」

腕を引かれる。

星羅「嫌……!」

星夜「姉ちゃんから離れろ!!」

星夜が飛びかかる。

男は星羅の腕を掴んだまま、もう片方の拳を振り抜いた。

ドゴッ!!

星夜「……っ!」

星羅「――星夜ぁぁぁ!!」

星夜が床に叩きつけられる。

星羅「いやぁぁぁっ!!」

何かが切れた。

星羅「星夜に……!」

涙を流しながら、男へ飛びかかる。

星羅「触るなぁぁぁ!!」

拳を振り抜く。

男が避ける。

もう一度。

星羅「――っ!」

男の胸元を掴む。

男「……星羅ちゃん」

そして――優しく笑った。

男「もう逃がさないよ」

ドッ!!

拳が星羅の腹へめり込む。

星羅「……っ」

息が詰まる。

身体から力が抜けていく。

それでも――。

星羅「……せい……や……」

床に倒れながら、星夜へ手を伸ばす。

星夜「姉ちゃん!!」

星羅「……逃げ……て……」

視界が暗くなる。

そのまま意識を失った。

男「……連れていくぞ」

男が星羅を抱き上げる。

星夜「待てぇぇぇ!!」

這うように手を伸ばす。

星夜「星羅ぁぁぁ!!」

男たちはそのまま倉庫を出ていく。

バタンッ!!

扉が閉まった。

――静寂。

星夜「…………」

数秒後。

星夜「……姉ちゃん?」

返事はない。

星夜「……姉ちゃん!!」

立ち上がろうとする。

身体が動かない。

星夜「嫌だ……」

頭の中に、昔の光景が蘇る。

連れていかれる星羅。

鎖に繋がれた姉。

自分は何もできなかった。

そして今――また同じ。

星夜「……また……俺は……」

床を拳で殴る。

ドンッ!!

星夜「また姉ちゃんを守れなかった!!」

壁を殴る。

棚を蹴る。

何度も、何度も。

星夜「姉ちゃんを返せぇぇぇ!!」

黒羽たちも立ち上がろうとする。

けれど、誰もすぐには動けない。

目の前で星羅を連れていかれた。

それが、あまりにも悔しかった。

そして――星夜の心に、あの日と同じ恐怖が完全に蘇っていた。