月影に咲く、一輪の華


星羅「…………」

指先が震える。

星夜「姉ちゃん?」

星羅は何も答えられない。

その文字を見ただけで分かる。

これは偶然なんかじゃない。

あの時、自分を鎖に繋いでいた人。

あの部屋で、自分を見つめていた人。

――あの人だ。

星羅「……やっぱり」

星夜「……姉ちゃん」

星羅「……あの人だよ」

声が震える。

星夜「…………」

星羅「絶対に……あの人」

黒羽「星羅、落ち着け」

星羅「でも……」

黒羽「今すぐ動くな」

星羅「…………」

黒羽がスマートフォンを見る。

黒羽「この番号、調べられるか?」

朔夜「やってみる」

來夢「メッセージの送信元も確認しよう」

豹牙「写真を撮った場所も分かるかもしれねぇ」

全員が一斉に動き始める。

その中で――。

夜凪だけは星羅のそばから離れなかった。

星羅「……夜凪」

夜凪「ん」

星羅「……怖い」

夜凪「……ああ」

否定しない。

「怖くない」とも言わない。

ただ、星羅の隣に立つ。

夜凪「怖くていい」

星羅「…………」

夜凪「でも、一人で抱えるな」

星羅「……うん」

その時星羅のスマートフォンが、また震えた。

全員が振り向く。

新しいメッセージ。

『そんなにたくさん男の子に囲まれて、星羅ちゃんは幸せそうだね』

星羅「…………」

背筋が凍る。

黒羽「……見られてる」

夜凪「…………」

夜凪がすぐに倉庫の外へ視線を向ける。

そして――窓の外。

遠くの電柱の陰に、一瞬だけ人影が見えた。

夜凪「……いた」

豹牙「どこだ!」

夜凪「――あそこ!」

全員が一斉に走り出す。

けれど、人影はすでに消えていた。

残されたのは――。

電柱の根元に置かれた、小さな白い封筒。

黒羽が拾い上げる。

表には、たった一言。

『またね、星羅ちゃん』

星羅「…………」

その文字を見つめながら――。

星羅は確信した。

もうこれは、過去じゃない。

今、自分を狙っている人間がいる。