月影に咲く、一輪の華

夜が深くなった。

倉庫の中では、みんながそれぞれの場所で過ごしている。

星羅は星夜の隣に座り、何気ない話をしていた。

星羅「ねぇ星夜。明日の朝、何食べたい?」

星夜「……何でもいい」

星羅「それ一番困るやつ」

星夜「じゃあ姉ちゃんが決めて」

星羅「うーん……」

そんな会話をしていると――。

黒羽「……星羅」

星羅「ん?」

黒羽「少しこっち来い」

星羅「?」

黒羽に呼ばれ、星羅は立ち上がる。

その様子を星夜が目で追う。

星羅「すぐ戻るからね」

星夜「……ああ」

黒羽と星羅が少し離れた場所へ移動する。

黒羽「今日のことなんだが」

星羅「うん」

黒羽「怖かったら、無理に平気なふりする必要はない」

星羅「……」

星羅は少し黙った。

星羅「……分かってる」

黒羽「本当に?」

星羅「うん」

それから、ほんの少し笑う。

星羅「みんながいてくれるから」

黒羽「…………」

星羅「昨日までだったら、たぶん一人で何とかしようとしてたと思う」

黒羽「……そうだろうな」

星羅「でも今は――」

星羅は倉庫の中を見る。

そこには、星夜や豹牙、來夢、朔夜、夜凪がいる。

星羅「一人じゃないから」

黒羽「……ああ」

その言葉を聞いて、黒羽は少しだけ安心した。

――その時。

カチャ。

倉庫の入口から、小さな金属音がした。

黒羽「…………」

星羅「……?」

二人が同時に振り向く。

誰もいない。

けれど、扉の隙間に――。

何かが挟まっている。

黒羽「……星羅、下がれ」

星羅「うん」

黒羽が慎重に近づき、それを取り出す。

小さな封筒。

黒羽「…………」

宛名はない。

ただ、封筒の表に――。

『星羅へ』

とだけ書かれていた。

星羅「…………」

見た瞬間、背筋が冷たくなる。

黒羽「開けるな」

星羅「……うん」

けれど、その時。

星夜がこちらへ近づいてきた。

星夜「……何だ?」

黒羽「また手紙だ」

星夜「…………」

星夜の顔が強張る。

星羅「星夜……」

星夜「……俺が見る」

黒羽「待て」

星夜「大丈夫」

そう言って封筒を受け取る。

そして――。

ゆっくり開く。

中に入っていた紙を広げる。

そこには、たった一行。

『次は、弟じゃなくて君だけを迎えに行く』

星羅「…………」

星夜「…………」

二人の顔から、一気に血の気が引いた。

豹牙「……おい」

來夢「何て書いてある?」

星夜は答えない。

紙を握りしめる。

星羅「…………」

今までずっと、自分が星夜を守らなければと思っていた。

なのに――。

今度は、星夜ではなく自分だけを狙うと告げている。

星羅「……私が」

星夜「姉ちゃん」

星羅「私が、狙われてる……」

夜凪が静かに星羅を見る。

その瞬間、星羅の中に一つの決意が生まれた。

――もし自分だけを狙っているなら。

星羅「……みんなを巻き込みたくない」

黒羽「星羅?」

星羅は、ゆっくり顔を上げる。

そして――。

一人で犯人のところへ行くことを考え始めていた。