月影に咲く、一輪の華


昨日の夜。

錯乱した星羅を抱きしめた時の感触が、まだ残っている。

そして今――。

星羅はいつも通り、星夜の隣にいる。

けれど。

夜凪には分かっていた。

さっき「怖い」と口にした時の星羅は、いつもの強がった笑顔じゃなかった。

夜凪「……黒羽」

黒羽「ん?」

夜凪「今日から、帰り道変えた方がいい」

黒羽「……同感だ」

豹牙「じゃあ俺らが送る」

來夢「全員でな」

朔夜「異論はない」

星羅「え、みんなで?」

豹牙「ああ」

星羅「そんな大げさな……」

黒羽「大げさじゃない」

星羅「…………」

黒羽「昨日の写真を見ただろ」

星羅「……うん」

黒羽「相手が誰か分からない以上、警戒する」

星羅はしばらく黙ってから――。

星羅「……分かった」

小さく頷いた。

その時。

倉庫の外で、車のドアが閉まる音がした。

バタン。

全員が一斉に振り返る。

星羅「…………」

黒羽「……誰か来た」

夜凪が静かに扉へ向かう。

そして、外を確認する。

そこには――誰もいない。

ただ、道路の向こうに停まっていた黒い車が、ゆっくり走り去っていく。

夜凪「…………」

黒羽「どうした?」

夜凪「……昨日の車と同じかもしれない」

星羅「…………」

胸の奥が、またざわついた。

そして――。

走り去る車の後部座席では、一人の男が窓越しに倉庫を見つめていた。

男「……まだ、あの男たちに守られているのか」

低い声。

そして、手元には――。

幼い星羅が鎖に繋がれている、あの写真。