月影に咲く、一輪の華

星羅は嬉しそうに笑って、星夜の髪をそっと撫でる。

星夜も、もう周りの視線を気にするのを諦めたのか、目を閉じたまま星羅に身体を預けていた。

豹牙「……昨日までの星夜からは想像つかねぇな」

來夢「ほんとそれ」

朔夜「普段はあれだけ素っ気ないのにな」

豹牙「しかも星羅のことになると、めちゃくちゃ甘えるじゃん」

星夜「……聞こえてる」

豹牙「起きてんじゃねぇか」

星夜「うるさい」

星羅「ふふっ」

星夜「姉ちゃん、笑うなって……」

星羅「だって可愛いんだもん」

星夜「…………」

耳まで赤くなる。

それを見た來夢が、堪えきれず吹き出した。

來夢「お前、顔真っ赤じゃん」

星夜「……!」

星夜は慌てて星羅から離れようとする。

けれど――。

星羅「……え」

離れかけた身体を、星羅が無意識に追いかける。

星夜「……姉ちゃん?」

星羅「……まだ、いいでしょ?」

その一言で、星夜が固まった。

星羅「昨日……怖かったから」

少しだけ目を伏せる。

星羅「今、星夜がここにいるのが嬉しいの」

星夜「…………」

星夜は何も言えなくなった。

そして、少しだけ身体を戻す。

星夜「……分かった」

星羅「ありがとう」

その様子を見ていた黒羽は、ふっと息を吐いた。

黒羽「……昨日の今日だ。今日は好きなだけ甘えさせてやれ」

豹牙「だな」

來夢「俺らも今日は何も言わねぇよ」

星夜「……お前らに言われると腹立つ」

來夢「なんでだよ!」

小さな笑いが倉庫に広がる。

昨日までの重苦しさが、ほんの少しだけ薄れていく。

その時――。

倉庫の扉が、三回。

コン、コン、コン。

全員の表情が変わった。

黒羽「……誰だ」

返事はない。

もう一度。

コン、コン。

星羅「…………」

星夜がすぐに起き上がる。

星夜「姉ちゃん、こっち」

星羅「うん」

黒羽が静かに扉へ近づく。

そして――。

扉を開けた。

そこに立っていたのは。

この前会ったばかりの――。

朱雀の瑛翔だった。