月影に咲く、一輪の華

星羅「……ん」

誰かの視線を感じて、星羅がゆっくり目を開けた。

目の前には、まだ眠っている星夜。

星羅「……あ」

自分が星夜に抱きついたまま眠っていたことに気づく。

けれど――離れない。

むしろ、もう一度ぎゅっと抱きしめる。

星羅「……おはよう、星夜」

星夜「…………ん」

まだ眠ったまま。

星羅はその寝顔を見つめて、ふっと笑った。

昨日の恐怖が嘘みたいだった。

今ここに星夜がいる。

それだけで、胸の奥が落ち着いていく。

すると――。

來夢「……なぁ」

豹牙「ん?」

來夢「俺ら、いつまで見てればいいんだ?」

豹牙「知らねぇよ」

朔夜「起こすのも悪いだろ」

黒羽「……放っておけ」

星羅「…………?」

声が聞こえて、星羅が顔を上げる。

そして、周りを見渡した瞬間――。

星羅「……えっ」

月影全員と目が合った。

星羅「…………」

数秒の沈黙。

星羅「……みんな、起きてたの?」

來夢「今起きた」

豹牙「……まあ、さっきな」

星羅「……そっか」

星羅は少し恥ずかしそうに笑う。

けれど、星夜から離れる気配はない。

豹牙「……星羅」

星羅「ん?」

豹牙「昨日あんなことがあったのに、朝からそれって……」

星羅「?」

豹牙「……いや、何でもねぇ」

來夢「安心してるんだろ」

星羅「うん」

即答だった。

星羅「星夜がいるから」

星夜「…………」

その瞬間、眠っていた星夜が少しだけ眉を動かした。

星羅「……あ」

星夜「……ん……」

ゆっくり目を開ける。

星夜「…………姉ちゃん?」

星羅「おはよう」

にこっと笑う。

星夜は一瞬、周りを見た。

そして――。

自分が星羅に抱きしめられていることに気づく。

星夜「…………」

さらに、その周囲には月影全員。

星夜「…………」

顔が一気に赤くなる。

星夜「……お前ら」

來夢「おはよう」

星夜「見るな」

豹牙「いや、見えるだろ」

星夜「……っ」

星羅「ふふっ」

星夜「姉ちゃんも笑うな!」

星羅「ごめん、ごめん」

そう言いながら、星羅はまだ星夜を抱きしめたまま。

星夜「……もういい」

諦めたように目を閉じる。

星羅「え?」

星夜「……もう少し、このままでいい」

星羅「……うん」

その瞬間。

月影の男たちは一斉に顔を見合わせた。

來夢「……やっぱ星夜には敵わねぇな」

豹牙「……くそ」

朔夜「……これは強敵だ」

黒羽「…………」

夜凪だけは黙っていた。

けれど、その横顔には――。

昨日までとは違う、少し柔らかな表情が浮かんでいた。