月影に咲く、一輪の華

朝。

倉庫の窓から差し込む光に、夜凪はゆっくりと目を覚ました。

夜凪「…………」

ぼんやりとした頭で周囲を見渡す。

――そうだ。

昨夜、星羅のそばにいるうちに、自分も眠ってしまったのだ。

夜凪はベッドを見る。

星羅「…………」

まだ眠っている。

昨日のような苦しそうな顔はしていない。

夜凪「……よかった」

小さく呟いて、個室を出る。

すると――。

夜凪「…………」

倉庫のソファーや床には、昨夜のまま月影のメンバーが転がっていた。

黒羽はソファーに身体を預け、來夢はその隣。

豹牙は床に寝転び、朔夜も壁際で眠っている。

そして――。

星夜「…………」

床で丸くなって眠っていた。

夜凪「……全員、帰らなかったのかよ」

昨夜のことが心配で、誰も星羅を一人にできなかったのだろう。

しばらくすると、個室の扉が開いた。

星羅「……ん……」

まだ眠そうな顔で出てくる。

星羅「夜凪、おはよう」

夜凪「ああ。おはよ」

星羅は周囲を見渡す。

そして――。

星羅「……あ」

星夜を見つけた。

床で眠っている弟。

星羅「星夜……」

その瞬間、星羅の顔がふわっと緩んだ。

そっと近づく。

起こさないように、星夜の隣に腰を下ろす。

そして、そのまま――。

ごろん。

星羅「……えへへ」

床に寝転がり、星夜の身体にぴったりくっつく。

腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。

星羅「……星夜、あったかい」

星夜「…………ん……」

寝ぼけながら少し身じろぎする。

けれど、星羅だと分かったのか、そのまま眠り続ける。

星羅は安心したように目を閉じる。

星羅「……いる」

小さな声。

昨日、あんなに怖かった。

あの写真を見て、あの日の記憶が蘇って。

それでも今は――。

自分の腕の中に、星夜がいる。

星羅「……よかった」

その声に、夜凪は何も言わなかった。

ただ、少し離れた場所から二人を見る。

やがて――。

黒羽「…………ん」

黒羽が目を覚ます。

そして目の前の光景を見て、固まった。

黒羽「…………」

続いて、來夢が起きる。

來夢「……朝……?」

視線を動かす。

來夢「…………あ」

豹牙「……ん?」

豹牙も目を開ける。

豹牙「…………」

朔夜「……?」

全員が、床で星夜にぴったりくっついて眠っている星羅を見る。

來夢「……朝からかよ」

豹牙「……姉弟ってすげぇな」

朔夜「……安心しているんだろう」

黒羽「…………」

昨夜まで、あれほど怯えていた。

なのに今は――。

星夜に抱きついて、穏やかな顔で眠っている。

豹牙「……昨日のこと考えると」

ぽつりと呟く。

豹牙「こうやって安心して寝れてるなら……よかったな」

誰も茶化さなかった。

ただ、静かに二人を見守る。

そして夜凪も――。

星羅が安心しきった顔で星夜に抱きついている姿を見つめながら、昨夜の腕の中の感触を思い出していた。

夜凪「…………」

自分が守った。

それが、少しだけ嬉しい。

けれど今は――。

星羅にとって、一番安心できる場所は星夜の隣だった。