月影に咲く、一輪の華


しかも――。

「今はお前が守られる番だ」

その言葉を思い出し、來夢が小さく息を吐く。

來夢「……あれ、反則だろ」

豹牙「…………」

豹牙も何も言えない。

正直、悔しかった。

自分だって星羅を守りたい。

あんなふうに苦しんでいるなら、自分が安心させてやりたかった。

なのに――。

星羅が最後に意識を失う直前、見ていたのは夜凪だった。

豹牙「……なんか」

ぽつりと呟く。

豹牙「夜凪に持ってかれた気がする」

來夢「……俺も思った」

朔夜「……同感だ」

黒羽「…………」

黒羽だけは何も言わない。

けれど、その拳は静かに握られていた。

星夜「…………」

そこへ、ずっと黙っていた星夜が口を開く。

星夜「……俺は」

全員が星夜を見る。

星夜「姉ちゃんを守りたい」

声が震えていた。

星夜「ずっと俺が守られる側だったから……今度こそって思ってた」

そして、閉じた扉を見る。

星夜「……でも、俺じゃ止められなかった」

誰も言葉を返せない。

星夜「夜凪が抱きしめたら……姉ちゃん、戻ってきた」

悔しそうに唇を噛む。

星夜「……すげぇな、夜凪」

その言葉には悔しさだけじゃない。

ほんの少しの感謝も混じっていた。

星夜「……姉ちゃんを助けてくれて、ありがとう」

その瞬間個室の扉の向こうから、ほんの微かな物音がした。

全員がそちらを見る。

けれど、誰も入ろうとはしなかった。

今は――。

星羅が安心して眠れる時間だから。

そして全員が、同じことを思っていた。

もう、星羅を一人で戦わせたくない。