月影に咲く、一輪の華

その夜。

倉庫の中には、まだ重たい空気が残っていた。

テーブルの上には、あの手紙。

『見つけた。今度は、逃がさない』

星羅「…………」

見るだけで胸が苦しくなる。

星夜も何も言わず、紙を見つめていた。

黒羽「……今日はもう、これ以上考えるな」

星羅「うん……」

そう答えた、その時だった。

ガタンッ。

倉庫の外から物音がした。

全員の視線が一斉に扉へ向く。

夜凪「……誰かいる」

黒羽「行くぞ」

扉を開けて外へ出る。

けれど――。

そこには誰もいなかった。

豹牙「……逃げたか?」

來夢「何か落ちてる」

來夢が地面にしゃがみ込む。

拾い上げたのは――一枚の写真。

來夢「……写真?」

黒羽「見せろ」

黒羽が受け取る。

そして、写真を見た瞬間。

黒羽「…………」

表情が変わった。

豹牙「どうした?」

黒羽「……星羅」

その声に、星羅が近づく。

星羅「……何?」

黒羽が写真を渡す。

星羅「…………」

――息が止まった。

そこに写っていたのは。

幼い頃の自分。

暗い部屋。

壁際に座り込んでいる私。

両手には手錠。

そして、その手錠から伸びた鎖が壁に繋がっている。

身動きが取れないように――。

鎖に繋がれている、自分自身の姿。

星羅「…………っ」

写真が手から滑り落ちる。

星羅「いや……」

星夜「姉ちゃん!」

星夜がすぐに駆け寄る。

星羅「……なんで」

震える声。

星羅「なんで……これが……」

星夜も写真を見た瞬間、顔から血の気が引いた。

星夜「…………」

あの日の光景。

自分の目の前で鎖に繋がれていた姉。

何もできずに泣いていた自分。

全部が一気に蘇る。

豹牙「……これ」

來夢「…………」

朔夜「……星羅の……昔の写真?」

誰も言葉が出ない。

普段の星羅からは、到底想像できない。

いつも笑っている。

誰かを守る時は、誰より強い。

そんな星羅が――。

幼い頃、こんな姿で閉じ込められていた。

豹牙「……誰が、こんな写真撮ったんだよ」

声が低くなる。

夜凪「…………」

写真をじっと見つめる。

その瞬間。

星羅「……あの人」

小さな声。

星夜「……姉ちゃん」

星羅「この写真……」

震える指で写真を指す。

星羅「あの人が撮った。」

星夜「…………」

二人だけには分かる。

これは、偶然残っていた写真なんかじゃない。

あの日、あの場所で――。

自分たちを閉じ込めていた犯人が撮った写真。

星羅「……まだ持ってたんだ」

その声には、恐怖が滲んでいた。

そして黒羽は、写真の裏側に気づく。

黒羽「……裏に何か書いてある」

写真をひっくり返す。

そこには、震えるような文字で――。

『あの時の続き、しようか』

そう書かれていた。