月影に咲く、一輪の華

その時だった。

倉庫の外から――。

ガタンッ。

全員の視線が、一斉に扉へ向く。

星羅「……今の、何?」

黒羽「……誰かいる」

星夜がすぐに立ち上がる。

星夜「俺が見てくる」

星羅「待って」

反射的に星夜の腕を掴む。

星夜「姉ちゃん?」

星羅「……一人で行かないで」

さっきまで過去のことで震えていたのに、星夜のことになると、身体が勝手に動く。

豹牙「……星羅」

星羅「……ごめん」

手を離す。

黒羽「全員で行く」

扉へ近づく。

黒羽がゆっくり開けた。

――誰もいない。

來夢「……?」

豹牙「気のせいか?」

夜凪「……いや」

夜凪が地面を見る。

夜凪「これ」

そこには、小さな紙切れが落ちていた。

黒羽が拾い上げる。

星羅「…………」

嫌な予感がする。

黒羽「……星羅」

紙には、短い言葉だけが書かれていた。

『見つけた。今度は、逃がさない』

星羅「…………っ」

身体が固まる。

星夜「姉ちゃん……」

星羅「……これ」

声が震える。

星羅「……やっぱり、あの人……」

黒羽「星羅?」

星羅は答えられない。

ただ、その文字を見つめていた。

あの日。

暗い部屋。

冷たい鎖。

そして、自分を見つめていた男の目。

星羅「…………怖い」

その言葉が、初めて口からこぼれた。

豹牙「……!」

來夢「星羅ちゃん……」

星羅「……怖い」

今度は、はっきりと言った。

星羅「……あの人が、また星夜を……」

星夜「姉ちゃん」

星羅「…………」

星夜がそっと手を握る。

星夜「俺はここにいる」

星羅「……うん」

星夜「今度は、俺も逃げねぇ」

星羅「…………」

その言葉に、星羅は強く手を握り返した。

黒羽「……決めた」

全員が黒羽を見る。

黒羽「こいつが誰なのか、俺たちで突き止める」

朔夜「……ああ」

豹牙「絶対に見つける」

來夢「星羅ちゃんを狙ってるなら、なおさらな」

夜凪「…………」

夜凪は落ちていた紙を見つめる。

そして静かに呟いた。

夜凪「……もう、逃げる必要ねぇだろ」

星羅「……え?」

夜凪「今度は一人じゃねぇから」

その言葉に、星羅は目を見開いた。

そして――。

ほんの少しだけ。

怖かった過去の中に、「今は違う」という感覚が生まれた。