月影に咲く、一輪の華

星羅「…………」

扉の向こうから聞こえた星夜の声に、涙がもう一粒落ちた。

星夜「姉ちゃん。……入っていい?」

返事をしようとして、声が出ない。

少し迷ったあと、私は小さく頷いた。

星羅「……うん」

ガチャ。

扉が開く。

星夜は何も言わずに入ってきて、ベッドの端に腰を下ろした。

星羅「……みんなに話したんだね」

星夜「……うん」

星羅「そっか」

俯いたまま、膝の上で手を握る。

星羅「……嫌だった」

星夜「……」

星羅「知られるの、怖かった」

星夜は黙って聞いている。

星羅「みんなに……弱いって思われたかな」

星夜「思わねぇよ」

星羅「……本当に?」

星夜「ああ」

即答だった。

星夜「俺が話したのは、姉ちゃんを困らせるためじゃない」

星羅「…………」

星夜「俺も……怖かったんだ」

その言葉に、星羅が顔を上げる。

星夜「手紙を見た瞬間、あいつかもしれないって思った」

星羅「……うん」

星夜「だから、みんなに知ってもらいたかった」

星羅「…………」

星夜「姉ちゃん一人で抱え込ませたくない」

星羅の目から、また涙が落ちる。

星羅「……星夜」

星夜「何?」

星羅「ありがとう」

星夜「…………」

星羅は涙を拭って、少しだけ笑った。

星羅「でもね」

星夜「ん?」

星羅「私も、星夜を守るから」

星夜「……またそれかよ」

星羅「だって――」

星夜「姉ちゃん」

珍しく、星夜が言葉を遮った。

星夜「今度は俺にも守らせて」

星羅「…………」

その言葉に、胸が詰まる。

星夜「ずっと姉ちゃんに守られてきたから」

星夜「今度は俺も、姉ちゃんの隣にいる」

星羅「……うん」

小さく頷く。

その時――。

個室の外から、物音がした。

星夜「……?」

扉を開ける。

そこには、黒羽たちがいた。

どうやら誰も、遠くへ行かずに待っていたらしい。

黒羽「……悪い。聞こえた」

星羅「…………」

豹牙「盗み聞きするつもりじゃなかった」

來夢「でも……」

來夢が少しだけ笑う。

來夢「星羅ちゃんに、一つ言いたくて」

星羅「……何?」

來夢「俺たち、別にお前を弱いなんて思ってねぇよ」

豹牙「むしろ逆だ」

朔夜「その過去を抱えたまま、今まで誰かを守ってきたんだろ」

夜凪「……強いと思う」

星羅「…………」

また涙が溢れそうになる。

黒羽「だから――」

黒羽が静かに言った。

黒羽「もう一人で抱え込むな」

その言葉に、星羅は唇を噛んだ。

そして――。

星羅「……うん」

今度は、ちゃんと笑えた。