月影に咲く、一輪の華


翌日になり疲れたまま学校に行って授業をしっかり受けた。

放課後のチャイムが鳴り、教室にいた生徒たちが一斉に帰り始める。

星羅「……終わったぁ」

机の上を片付けながら、私は大きく伸びをした。

昨日は朱雀に連れていかれたせいで、いつもより帰りが遅くなった。

それでも、今日は何事もなかったように学校が終わった。

星羅「今日はまっすぐ帰ろうかな」

鞄を持ち、教室を出る。

廊下を歩いていると、少し先に星夜の姿が見えた。

星羅「星夜!」

星夜「……姉ちゃん」

星羅「一緒に帰ろ」

星夜「ああ」

並んで歩き出す。

けれど、校門を出たところで――。

星夜「……姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「今日、変な奴に声かけられなかったか?」

星羅「え?」

星夜「……いや」

星羅「何もないよ?」

星夜「そうか」

星羅「どうしたの?」

星夜「……何でもねぇ」

星羅「?」

星夜は前を向いたまま歩く。

けれど、その表情はどこか険しかった。

昨日の一件。

朱雀が学校の中にまで入り込んでいた。

そのことが、星夜の中でずっと引っかかっている。

星羅「星夜」

星夜「ん?」

星羅「心配してくれてる?」

星夜「……別に」

星羅「ふふっ」

星夜「笑うな」

星羅「だって嬉しいから」

星夜「…………」

星羅は星夜の腕に軽く自分の腕を絡める。

星羅「大丈夫だよ」

星夜「……」

星羅「私、ちゃんと気をつけるから」

星夜「……約束な」

星羅「うん」

後ろから、低い声がした。

「……仲良しだな」

星羅「……?」

振り返る。

そこにいたのは――。

黒羽だった。

少し離れたところには、來夢、豹牙、朔夜、夜凪もいる。

星羅「みんな!」

來夢「よ」

豹牙「昨日ぶり」

朔夜「無事そうだな」

夜凪「…………」

星羅「どうしたの? みんな揃って」

黒羽「迎えに来た」

星羅「え?」

黒羽「昨日のことがあるからな」

星羅「そんなに心配しなくても大丈夫なのに」

豹牙「それが心配なんだよ」

星羅「?」

豹牙「お前、自分がどれだけ狙われやすいか分かってねぇだろ」

星羅「……そうかな」

來夢「そうだよ」

全員の視線が集まる。

星羅「……分かった」

小さく笑う。

星羅「じゃあ今日は、みんなと帰る」

その言葉に、豹牙が少し嬉しそうに笑った。

けれど――誰も気づいていなかった。

少し離れた道路脇。

停まっている黒い車の中から、一人の男がこちらを見ていることに。

男はスマートフォンを耳に当てる。

「……確認した」

短く告げる。

「星羅は、今日も月影と一緒だ」

そして――。

電話の向こうから返ってきた言葉を聞いた男は、口元を上げた。

「了解」

車が静かに走り出す。

まだ誰も知らない。

朱雀とは別の何かが――。

星羅たちのすぐ近くまで近づいていることを。