月影に咲く、一輪の華

帰り道。

星羅「ねぇ、星夜」

星夜「ん?」

星羅「そういえばこの前、みんなに甘えてるところ見られちゃったね」

星夜「…………」

ぴたりと足が止まる。

星夜「……忘れろ」

星羅「ふふっ」

星夜「笑うなって」

星羅「だって、星夜可愛かったもん」

星夜「……姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「……あれは、寝ぼけてただけだから」

星羅「うん、分かってるよ」

星夜「…………」

少し黙って歩き出す。

けれど、しばらくすると星夜がぽつりと呟いた。

星夜「……姉ちゃん」

星羅「うん?」

星夜「俺、姉ちゃんに甘えるの……嫌じゃないから」

星羅「…………」

思わず足を止める。

星夜は前を向いたまま、耳を赤くしている。

星羅「……そっか」

私は嬉しくなって、星夜の手を握った。

星羅「じゃあ、これからも甘えていいよ」

星夜「…………」

星羅「私、星夜が甘えてくれるの嬉しいから」

星夜「……うん」

小さく返事をする。

その少し後ろを歩いていた黒羽たちは、二人の会話を聞いていた。

來夢「……なんかさ」

豹牙「ん?」

來夢「余計に羨ましくなったんだけど」

豹牙「……俺も」

朔夜「……同感だ」

夜凪「…………」

夜凪も否定しなかった。

ただ、四人の中で一番複雑そうな顔をしていたのは黒羽だった。

黒羽「……星夜には敵わねぇな」

來夢「黒羽、お前もかよ」

黒羽「……何がだ」

來夢「いや、別に」

誰もそれ以上は言わない。

星羅はそんなことなど知らず、星夜と並んで歩いている。

星羅「帰ったらパンケーキ作ろうね」

星夜「……ああ」

星羅「朧のも美味しかったけど、私も負けないから!」

星夜「姉ちゃんの方が美味いだろ」

星羅「ほんと?」

星夜「……たぶん」

星羅「ふふっ」

二人の笑い声が夜道に響く。

その後ろで、月影の男たちはそれぞれ顔を見合わせた。

――星羅の隣。

そこは、思っていた以上に遠い場所だった。