月影に咲く、一輪の華

紅蓮「……瑛翔、お前ほんと分かりやすいな」

瑛翔「だからうるさいって」

星羅「ふふっ」

瑛翔「……ほら、また笑う」

星羅「だって二人とも仲良しだなって」

瑛翔「仲良し?」

紅蓮「こいつが勝手に絡んでくるだけだ」

瑛翔「ひどくない?」

そんな二人のやり取りを見て、星羅は思わず笑ってしまう。

敵の拠点に連れてこられたはずなのに。

不思議と、少しずつ緊張が解けていた。

その時――。

刹那「……星羅」

星羅「ん?」

刹那「お前は、怖くないのか」

星羅「何が?」

刹那「ここにいることだ」

星羅「…………」

星羅は少し考えてから、正直に答えた。

星羅「怖いよ」

刹那「……」

星羅「だって、朱雀の人たちのこと何も知らないし」

紅蓮「じゃあ、なんでそんな普通にしてんだ?」

星羅「……うーん」

少し困ったように笑う。

星羅「紅蓮が、私に何もしないって言ったから」

紅蓮「……」

星羅「それに――」

星羅は三人を見る。

星羅「ちゃんと話してみたら、怖くない人もいるかもしれないって思ってる」

刹那「…………」

瑛翔「…………」

朧「…………」

その言葉に、三人とも何も返せなかった。

敵だから怖い。

敵だから嫌い。

そう決めつけることなく、自分の目で相手を見ようとしている。

刹那は、そんな星羅の姿を静かに見つめた。

――変わった女だ。

敵を前にしているのに、最初から決めつけない。

そして朧は、ふと星羅の手元に目を向けた。

そこには、旧校舎でできた小さな擦り傷が残っていた。

朧「……怪我」

星羅「え?」

朧「手」

星羅「あ……これ?」

星羅は自分の手を見る。

星羅「大したことないよ」

朧「…………」

星羅「心配してくれたの?」

朧「別に」

短く答える。

けれど、朧の視線は傷から離れない。

星羅「ふふっ。ありがとう」

朧「…………」

その一言に、朧の瞳がほんの少し揺れた。

紅蓮はそんな三人を眺めながら、楽しそうに笑う。

紅蓮「……まだ始まったばっかだな」

星羅「何が?」

紅蓮「こっちの話」

星羅「?」

星羅には何のことか分からない。

けれど――。

この場所で、少しずつ。

星羅と朱雀の距離も、動き始めていた。