月影に咲く、一輪の華

その言葉の意味を考えていると、瑛翔が横から口を挟んだ。

瑛翔「総長だけずるくない?」

紅蓮「何がだよ」

瑛翔「星羅ちゃんとそんな真面目な話して」

紅蓮「お前は黙ってろ」

瑛翔「はいはい」

瑛翔は笑いながら、星羅の前に置かれていた椅子を引く。

瑛翔「星羅ちゃん、こっち座れば?」

星羅「ありがとう」

素直に座る。

瑛翔「ねぇ、星羅ちゃん」

星羅「ん?」

瑛翔「好きな男とかいる?」

星羅「……?」

あまりにも突然で、私は瞬きをした。

星羅「好きな男?」

瑛翔「そう」

星羅「いないよ?」

瑛翔「即答かぁ」

瑛翔は楽しそうに笑う。

瑛翔「じゃあ、どんな男がタイプ?」

星羅「うーん……」

少し考える。

星羅「優しい人かな」

瑛翔「へぇ」

星羅「あと、ちゃんと大切なものを持ってる人」

瑛翔「…………」

軽い質問のつもりだった。

けれど、その答えを聞いた瞬間、瑛翔の笑顔がほんの少しだけ止まった。

星羅「瑛翔?」

瑛翔「……いや」

瑛翔はいつもの調子に戻って笑う。

瑛翔「それなら俺、結構いい線いってるんじゃない?」

星羅「ふふっ」

星羅「瑛翔は優しいと思うよ」

瑛翔「…………」

今度こそ、言葉が止まった。

星羅「どうしたの?」

瑛翔「……いや」

瑛翔は片手で顔を覆う。

瑛翔「それ、反則だわ」

星羅「?」

瑛翔「普通に嬉しいじゃん……」

紅蓮「お前、もう落ちてんじゃねぇか」

瑛翔「……うるさいっす」

刹那「…………」

朧「…………」

二人も黙ってその様子を見ている。

そして瑛翔は、自分でも気づき始めていた。

今までなら、女の子に「優しい」なんて言われても、軽く笑って流せた。

なのに――。

星羅に言われた一言だけは、胸の奥に残って離れない。

瑛翔「……参ったな」

小さく呟く。

星羅「何が?」

瑛翔「なんでもない」

そう答えながら、瑛翔は笑った。

けれど、その笑顔の奥では。

「もっとこの子に褒めてもらいたい」

そんな気持ちが、もう芽生えていた。