月影に咲く、一輪の華

星羅「そう?」

紅蓮「ああ」

星羅は少しだけ首を傾げる。

紅蓮「普通なら、もっと怖がるだろ。敵の総長にそんな顔で言い返したりしねぇよ」

星羅「だって、星夜のことだから」

紅蓮「……また弟か」

星羅「うん」

迷いのない返事。

紅蓮は思わず笑った。

紅蓮「お前の頭の中、星夜でいっぱいだな」

星羅「そうかも」

紅蓮「否定しねぇんだな」

星羅「だって大事だもん」

その笑顔に、紅蓮は一瞬言葉を失った。

――やっぱり、気になる。

さっき喧嘩した時もそうだった。

敵を前にして怯えない強さ。

弟を守る時の凄まじい殺気。

それなのに、こうして笑っている時は驚くほど無防備で、柔らかい。

一人の人間の中に、まるで違う二つの顔がある。

紅蓮「……なぁ、星羅」

星羅「ん?」

紅蓮「お前、月影の奴らといつからあんなに仲良くなった?」

星羅「まだそんなに長くないよ」

紅蓮「なのに、あいつらのこと信じてんのか?」

星羅「うん」

紅蓮「……どうして?」

星羅は少し考えてから答えた。

星羅「一緒にいると分かるから」

紅蓮「何が?」

星羅「みんな、ちゃんと大切なものがあるんだなって」

紅蓮「…………」

星羅「だから、私は月影のみんなを信じてる」

紅蓮は黙って星羅を見る。

自分たち朱雀のことはまだ何も知らないくせに。

月影の人間だけは、迷いなく信じている。

それが少しだけ羨ましく思えた。

紅蓮「……じゃあ」

星羅「?」

紅蓮「朱雀のことは?」

星羅「え?」

紅蓮「俺らのことは、信じられる?」

星羅「…………」

初めて、星羅が答えに迷った。

紅蓮はそれを見て、笑う。

紅蓮「まあ、今は無理だよな」

星羅「……うん」

紅蓮「なら、これから知ればいい」

星羅「……え?」

紅蓮「俺らがどんな奴らなのか」

紅蓮はゆっくり立ち上がる。

紅蓮「そしたら、お前が俺らをどう思うかは自由だ」

星羅「…………」

紅蓮「ただ――」

振り返った紅蓮が、楽しそうに笑う。

紅蓮「俺はもう、お前のことを知りたいと思ってる」

星羅「……紅蓮」

その言葉に、なぜか胸が少しだけ騒いだ。