月影に咲く、一輪の華


紅蓮「……まあ、今日は紹介だけでいいだろ」

星羅「うん」

私は改めて三人を見る。

瑛翔「星羅ちゃん、せっかくだし座りなよ」

星羅「ありがとう」

瑛翔が近くの椅子を引いてくれる。

星羅「優しいね」

瑛翔「そういうところも含めて、俺のこと好きになってくれていいよ?」

星羅「ふふっ」

瑛翔「……やっぱ効かねぇか」

紅蓮「諦めろ」

瑛翔「まだ始まったばっかですよ、総長」

楽しそうに笑う瑛翔。

その横で、刹那は黙ったまま星羅を見ていた。

星羅「刹那?」

刹那「……何だ」

星羅「さっきからずっと見てるから」

刹那「……悪い」

星羅「ううん。気になっただけ」

刹那は少しだけ視線を逸らした。

刹那「……お前は」

星羅「ん?」

刹那「敵を前にしても、そんな顔で笑えるんだな」

星羅「……?」

刹那「いや」

それ以上は言わない。

そして、少し離れた場所にいる朧へ視線を向ける。

朧は相変わらず無言だった。

星羅「朧」

朧「……何」

星羅「静かだね」

朧「……よく言われる」

星羅「でも、嫌な感じしないよ」

朧「…………」

初めて、朧の目が少しだけ動いた。

星羅「なんか……夜凪に似てるかも」

紅蓮「夜凪?」

星羅「うん。私のところにも、すごく綺麗な顔してて、あんまり喋らない人がいるの」

瑛翔「へぇ」

星羅「でも、ちゃんと優しいんだよ」

朧「…………」

星羅「だから、朧もきっと優しい人なんじゃないかなって」

朧は何も答えなかった。

ただ――。

星羅から視線を逸らさなかった。

紅蓮はそんな朧を見て、口元をわずかに上げる。

紅蓮「……お前らしくねぇな」

朧「……うるさい」

瑛翔「お?」

刹那「…………」

ほんの少しだけ。

朱雀の空気が変わった。

そして星羅はまだ知らない。

この場にいる四人の中で――。

一番早く星羅への興味を深めていくのが誰なのか。

それが決まるのは、もう少し先のことだった。