月影に咲く、一輪の華

生徒指導室の扉が勢いよく開いた。

黒羽「――星羅!」

星羅「黒羽!」

その後ろから、星夜たちも一気に入ってくる。

星夜「姉ちゃん!」

星羅「星夜!」

その姿を見た瞬間、胸の奥がほっと緩んだ。

よかった。

来てくれた。

けれど――。

紅蓮「……へぇ」

紅蓮は、どこか楽しそうに笑っていた。

黒羽「星羅から離れろ」

紅蓮「嫌だね」

豹牙「……あ?」

豹牙が一歩前へ出る。

來夢「紅蓮、何考えてんだよ」

朔夜「星羅を返せ」

夜凪「……今すぐ」

月影全員の視線が紅蓮に集まる。

けれど紅蓮は、まるで焦っていなかった。

むしろ――楽しそうだった。

紅蓮「そんな怖ぇ顔すんなって」

星羅「紅蓮……?」

紅蓮「ちょっと借りるだけだ」

星羅「え?」

次の瞬間に紅蓮が私の身体をひょいっと抱え上げた。

星羅「えっ!?」

肩に担がれる。

星羅「ちょ、紅蓮!?」

星夜「――姉ちゃん!!」

一瞬で空気が変わった。

豹牙「おい!!」

黒羽「紅蓮!!」

紅蓮「じゃあな、月影!」

星羅「ちょっと待って!」

紅蓮「星羅、もらってくぜー」

星羅「えぇ!?」

紅蓮はそのまま窓へ向かう。

星羅「紅蓮! 下ろして!」

紅蓮「暴れんなって。落ちるぞ」

星羅「だったら下ろしてよ!」

窓を開ける。

その先は、一階下の屋根へ続いていた。

黒羽「待て!」

紅蓮「またな」

そう言って――。

紅蓮は私を担いだまま、窓から飛び降りた。

星羅「きゃあっ!!」

豹牙「星羅!!」

星夜「姉ちゃん!!」

月影が一斉に窓へ駆け寄る。

けれど、もう遅かった。

紅蓮は下の屋根へ着地すると、そのまま私を担いで走り出す。

星羅「紅蓮!! ほんとに下ろして!!」

紅蓮「嫌だ」

星羅「なんで!?」

紅蓮「気に入った女を、そう簡単に返すと思うか?」

星羅「…………」

その言葉に、紅蓮は楽しそうに笑った。

紅蓮「さて――」

肩に担いだ星羅を見下ろす。

紅蓮「少し付き合ってもらうぜ、星羅」

そのまま紅蓮は、私を連れて朱雀の方へ消えていった。

残された月影。

星夜「…………」

拳を握りしめる。

星夜「……姉ちゃんを取り戻す」

黒羽「当然だ」

豹牙「……絶対、連れ戻すぞ」

來夢「当たり前だろ」

朔夜「……行くぞ」

夜凪「…………」

夜凪だけは何も言わなかった。

ただ、窓の外を見つめながら――。

静かに拳を握っていた。