月影に咲く、一輪の華

紅蓮「二人でゆっくり話そうぜ、星羅」

星羅「……二人?」

私は部屋の中を見渡す。

どう見ても、二人じゃない。

紅蓮の後ろには朱雀が何人もいる。

星羅「……全然二人じゃないじゃん」

紅蓮「ははっ」

思わず笑ったのか、紅蓮が肩を揺らす。

紅蓮「確かにな」

星羅「もう」

少しだけ頬を膨らませる。

でも――。

やっぱりおかしい。

わざわざ学校に紛れ込んで、先生の呼び出しまで偽装して。

ただ話したいだけとは思えない。

星羅「……何が目的?」

紅蓮「警戒すんなって」

星羅「するよ」

紅蓮「昨日の今日だもんな」

紅蓮は壁に寄りかかり、余裕のある顔で私を見る。

紅蓮「でも、今日は喧嘩するつもりはねぇ」

星羅「じゃあ、帰して」

紅蓮「それは無理」

星羅「……」

紅蓮「せっかく来てもらったんだからな」

その言葉に、私は少し眉を寄せる。

星羅「私、騙されたんだけど」

紅蓮「だから悪かったって」

全然悪いと思ってなさそうな笑顔。

星羅「……紅蓮って、ほんと変な人」

紅蓮「よく言われる」

星羅「褒めてないよ?」

紅蓮「知ってる」

また笑う。

敵なのに。

昨日初めて会ったばかりなのに。

どうしてこんなに余裕でいられるんだろう。

紅蓮「なぁ、星羅」

星羅「ん?」

紅蓮「お前、俺らのこと怖くねぇの?」

星羅「……怖いよ」

紅蓮「へぇ?」

意外そうに眉を上げる。

星羅「でも、怖いからって何でも言うこと聞くわけじゃないでしょ?」

紅蓮「…………」

一瞬、紅蓮の表情から笑みが消えた。

そして――ゆっくり口元が上がる。

紅蓮「……やっぱ、お前面白ぇわ」

星羅「またそれ?」

紅蓮「ああ」

紅蓮は私から視線を逸らさない。

紅蓮「昨日より、もっと気に入った」

その瞬間――。

廊下の向こうから、誰かが走ってくる音が響いた。

「いたぞ!」

「星羅が、生徒指導室に入っていった!」

星羅「……え?」

紅蓮「…………」

朱雀の生徒たちも、一斉に顔を見合わせる。

そして廊下から聞こえた声。

「月影が来るぞ!」

紅蓮が、楽しそうに笑った。

紅蓮「……やっぱり来たか」

星羅「……月影?」

紅蓮「お前、愛されてんな」

その言葉に、胸がざわつく。

――まさか。

星夜も来る。

そう思った瞬間、扉の向こうから――。

ドンッ!!

激しい音が響いた。