月影に咲く、ただ1人の華


翌朝学校に来ると昨日の騒ぎが嘘みたいに、桜凛高校にはいつもの空気が戻っていた。

私は自分の席で頬杖をつきながら、窓の外を眺めていた。

昨日のことを思い出す。

旧校舎で見た鎖。

あの瞬間に蘇った、遠い記憶。

屋上で息ができなくなったこと。

そして――紅蓮。

星羅「…………」

胸の奥が少しだけ重い。

でも、今日はもう大丈夫。

そう思っていた。

その時、教室の前方から声がした。

「星羅」

星羅「ん?」

振り返る。

そこに立っていたのは、見覚えのない男子生徒だった。

男子生徒「先生が呼んでたぞ」

星羅「先生?」

男子生徒「ああ。生徒指導室に来いって」

星羅「……何かしたかな?」

男子生徒「さあ。俺は伝えに来ただけだから」

星羅「そっか。ありがとう」

男子生徒はそれだけ言うと、教室を出ていった。

星羅「……生徒指導室かぁ」

少し考える。

昨日の旧校舎の件だろうか。

でも、先生から直接呼ばれたわけじゃない。

それでも、わざわざ嘘をつく理由もないと思った。

星羅「行ってみよう」

私は席を立ち、教室を出る。

その男子生徒の制服。

どこか見慣れない気がした。

けれど、その時の私は――そこまで気に留めなかった。

階段を下り、生徒指導室へ向かう。

廊下には人が少ない。

星羅「……」

なんとなく嫌な感じがする。

でも、足を止めることなく歩いていく。

やがて、生徒指導室の前に着いた。

星羅「失礼します」

扉を開ける。