月影に咲く、一輪の華

星夜「……ん」

腕の中で、星夜が小さく身じろぎした。

星羅「まだ寝てていいよ」

そう言って、私はまた髪を撫でる。

星夜「……星羅……」

寝ぼけた声。

星羅「ふふっ」

その名前を聞くだけで、なんだか嬉しくなる。

星羅「はいはい。ここにいるよ」

星夜「……ん」

それだけで安心したのか、また静かに眠りに落ちていく。

私はその寝顔を眺めながら、ふと小さく笑った。

星羅「……ほんと、甘えん坊なんだから」

來夢「甘えてる星夜とかレアすぎる」

星羅「可愛いでしょ?」

來夢「そうだな」

來夢は少しだけ考えるように黙った。

そして、ぽつり。

來夢「なんか……いいな」

星羅「何が?」

來夢「いや、何でもない」

星羅「またそれ?」

來夢「ははっ」

笑って誤魔化す。

でも、胸の奥にはさっきとは違う感情が残っていた。

星羅に甘えたい。

そんなことを考える自分が、少しおかしい。

でも――。

星羅が誰かを大切そうに抱きしめる姿を見ていると、自分もその腕の中に入ってみたいと思ってしまう。

もちろん、今じゃない。

星夜がいる。

今は絶対に邪魔しない。

來夢「……まあ、気長にいくか」

黒羽「何がだ?」

來夢「なんでもねぇよ」

その横で、夜凪は黙っていた。

けれど、視線だけは星羅から離れない。

夜凪「…………」

そして朔夜も、何も言わずに目を伏せる。

豹牙だけは、さっきからずっと同じ場所に座ったまま。

もう自覚している。

自分は星羅が好きだ。

だからこそ――。

焦るつもりはなかった。

星羅「……ねぇ、みんな」

黒羽「ん?」

星羅「ここって、泊まっていってもいいの?」

全員「…………」

一瞬。

倉庫の空気が止まった。

星羅「……?」

豹牙「……お前、それは危ねぇぞ」

星羅「なんで?」

豹牙「……なんでもねぇ」

星羅「また?」

豹牙「まただよ」

星羅は不思議そうに首を傾げる。

その隣では、眠っている星夜が無意識に星羅の服をぎゅっと掴んだ。

星羅「……ふふ」

その手を優しく握り返す。

星羅「じゃあ、もう少しここにいようかな」

誰も反対しなかった。

むしろ――。

全員が、もう少しだけ星羅と一緒にいたかった。