月影に咲く、一輪の華

ソファの上で、星夜が小さく身じろぎした。

星夜「……ん……」

眠たそうに目を開ける。

私はすぐに気づいて、顔を覗き込んだ。

星羅「おはよう、星夜」

にこっと笑う。

その瞬間。

星夜「……星羅」

星羅「……ん?」

星夜はまだ半分眠ったまま、私を見上げた。

そして何も言わず、ぎゅっと抱きついてくる。

星羅「わっ……」

そのまま私の胸元に顔を埋めて、完全に力を抜いた。

星羅「……ふふっ」

寝ぼけてるんだ。

私は星夜の髪を優しく撫でる。

星羅「星夜?」

星夜「……ん……」

それだけ。

そして、そのままもう一度眠ってしまった。

星羅「もう……」

可愛くて仕方がない。

私は小さく笑いながら、星夜の頭を撫で続けた。

その光景を見ていた月影の男たちは、誰一人として言葉を発しなかった。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

夜凪「…………」

黒羽「……」

しばらくして、來夢がぽつりと口を開く。

來夢「……星羅」

星羅「ん?」

來夢「星夜って……普段、あんな感じじゃねぇよな?」

星羅「うん?」

私はきょとんとする。

星羅「普段はあんな感じじゃないよ」

來夢「だよな……」

星羅「でも、星夜って本当は甘えん坊なんだよ」

豹牙「……甘えん坊?」

星羅「うん」

私は眠っている星夜を見ながら、嬉しそうに笑う。

星羅「普段は無口だし、女の子も苦手だし、あんまり人に甘えないけどね」

星羅「甘えたい時だけ、私のこと『星羅』って呼ぶの」

「…………」

全員が固まった。

星羅「だから今の星夜は、完全に甘えモード」

豹牙「……名前で呼ぶのか」

星羅「そうだよ」

朔夜「……いつもは姉ちゃんなのに?」

星羅「うん。甘える時だけ」

夜凪「…………」

星羅「昔からそうなの」

私は笑いながら星夜の頬を指でつつく。

星羅「可愛いでしょ?」

その瞬間男たちの胸の奥に、同じ感情が湧いた。

――甘えたい。

――星羅に甘やかされたい。

――「星羅」って呼んで、こんなふうに抱きしめてもらいたい。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

夜凪「…………」

黒羽「…………」

けれど、誰も口には出せない。

だって――。

今、星羅の腕の中にいるのは。

自分たちが一番羨ましいと思ってしまった――星夜なのだから。