月影に咲く、一輪の華

星羅「ねぇ星夜、屋上ってどんなところ?」

星夜「普通の屋上」

星羅「景色きれい?」

星夜「知らねぇ」

星羅「見たことないの?」

星夜「昼飯食うために行ってるだけだからな」

星羅「そっかぁ」

そんな話をしながら歩いていると、さっきから周りの視線が妙に気になる。

でも私は星夜にくっついていることの方が嬉しくて、あまり気にせずそのまま歩いた。

しばらくして、星夜が屋上へ続く階段を上り始める。

私も当然のようについていく。

星羅「屋上楽しみ〜!」

星夜「……子供かよ」

星羅「だって初めてなんだもん!」

星夜「はいはい」

階段を上りきると、星夜が屋上の扉を開けた。

その瞬間――。

「…………」

中にいた男の子たちの視線が、一斉にこちらへ向いた。

どうやら星夜の友達らしい。

数人の男の子がいる。

その中でも一番最初に声を上げたのは、少し離れた場所に座っていた男の子だった。

「……誰?」

別の男の子も私を見る。

「女?」

「なんで女子がここにいるんだ?」

そんな声が聞こえてくる。

私はその視線を不思議そうに見返した。

すると、みんなの視線が私から星夜へ移った。

正確には――。

星夜の腕にしっかり絡みついている私へ。

「……え?」

「ちょっと待て」

「星夜?」

「お前、なんで女に引っ付かれてんの?」

「…………」

星夜は何も答えない。

ただ、いつもの無愛想な顔で私を見下ろしている。

誰もが驚いたような顔をしていた。

そりゃそうだ。

私もここに来るまで知らなかったけど、星夜は学校ではかなり怖がられているらしい。

そんな星夜に女の子がべったりくっついている。

しかも星夜は、それを振りほどこうともしない。

「……星夜って女嫌いじゃなかった?」

「俺もそう聞いてた」

「ていうか、めちゃくちゃ美人じゃね?」

そんな声が次々に聞こえてくる。

美人と言われたことより、星夜が女嫌いだと言われたことの方が気になった。

星羅「星夜って女の子嫌いなの?」

星夜「……別に」

星羅「じゃあ私のことは?」

星夜「姉ちゃんは別」

即答だった。

星羅「やっぱり星夜大好き!」

ぎゅーっと腕に抱きつく。

星夜「……はいはい」

また呆れたように言われたけど、やっぱり離されることはなかった。

そんな私たちを見て、屋上にいた男の子たちはますます困惑した顔をしていた。

そして、一人の男の子が私たちの方へ歩いてくる。

「なぁ、星夜」

星夜「何」

「この子……誰なんだ?」

私は星夜の腕にくっついたまま、その男の子を見上げた。

すると、その男の子は私を見た瞬間、少しだけ目を見開いた。

まるで、想像していたものとは全然違ったものを見たみたいに。

――さて。

この人たちは一体、誰なんだろう?