月影に咲く、一輪の華

星羅は笑いながら、また豹牙の背中に身体を預けた。

星羅「豹牙ってさ」

豹牙「ん?」

星羅「怖そうに見えるけど、優しいよね」

豹牙「……は?」

星羅「だって、私が怖がってる時も何も聞かずにいてくれたし」

豹牙「それは……」

星羅「それに今も、私が背中借りても何も言わないし」

豹牙「……お前が勝手に乗ってきただけだろ」

星羅「でも嫌だったら怒るじゃん」

豹牙「…………」

星羅「だから優しい」

あまりにも真っ直ぐ言われて、豹牙は言葉を失った。

女からそんなふうに言われたことなんて、今までほとんどない。

ましてや、こんな無防備な顔で。

星羅「私、豹牙好きだよ」

豹牙「…………っ」

心臓が跳ねる。

豹牙「……お前、それ……」

星羅「ん?」

豹牙「簡単に言うなよ」

星羅「なんで?」

豹牙「……なんでもねぇ」

星羅「変なの」

星羅はまた笑った。

その笑顔を見ていると、胸の奥が妙に苦しくなる。

――好き。

その言葉を、別の意味で聞いてしまった。

もちろん星羅にそんなつもりがないことくらい分かっている。

それでも一度意識してしまえば、もう駄目だった。

今までなら、近づかれれば照れていただけ。

可愛いと思っても、ただ面白い女だと思っていた。

けれど今は――。

豹牙「…………」

自分の背中に預けられた重みが、妙に愛おしく感じる。

もっとこのままでいたい。

もっと笑っていてほしい。

そんな感情が、どんどん膨らんでいく。

その時、向かいのソファから來夢が豹牙を見てニヤッと笑った。

來夢「……豹牙」

豹牙「何だよ」

來夢「顔、真っ赤」

豹牙「うるせぇ!!」

星羅「ふふっ」

豹牙「……笑うな!」

星羅「だって豹牙面白いんだもん!」

また笑う。

豹牙は顔を逸らした。

――完全に、持っていかれていた。