月影に咲く、一輪の華

月影の倉庫に入ってから、少し時間が経った。

みんながそれぞれ好きな場所に座る中、私はソファに座ってぼんやりしていた。

星羅「……ふぅ」

まだ少し疲れてる。

でも、ここにいると落ち着く。

ふと顔を上げると、少し離れたところに豹牙がいた。

星羅「豹牙」

豹牙「ん?」

星羅「ここって、いつもみんなで集まってるの?」

豹牙「ああ。暇な時はだいたいここにいる」

星羅「へぇ……」

辺りを見回す。

星羅「なんかいいね、ここ」

豹牙「何が?」

星羅「みんなの居場所って感じがする」

豹牙「……まあな」

星羅「私も好きかも」

豹牙「……」

その言葉に、豹牙の耳が少し赤くなる。

星羅「……あれ?」

豹牙「何だよ」

星羅「また顔赤い」

豹牙「赤くねぇ!」

星羅「赤いよ?」

豹牙「うるせぇ」

星羅「ふふっ」

私は笑いながら立ち上がる。

そして、豹牙のところへ歩いていく。

豹牙「……何だ?」

星羅「んー?」

そのまま豹牙の背後へ回って――。

ごろん。

星羅「ここ、やっぱり落ち着く」

豹牙「……おい」

私が豹牙の背中に身体を預ける。

この前と同じ。

豹牙の背中は思っていたよりずっと温かくて、なんだか安心する。

豹牙「……またそれかよ」

星羅「うん」

豹牙「人の背中を何だと思ってんだ」

星羅「枕?」

豹牙「……お前な」

星羅「嫌?」

豹牙「…………」

豹牙は少し黙った。

星羅「嫌ならどくよ?」

そう言って身体を起こそうとすると――。

豹牙「……別に」

星羅「え?」

豹牙「そのままでいろ」

星羅「……いいの?」

豹牙「ああ」

星羅「やった」

私は嬉しくなって、そのまま背中に身体を預け直す。

星羅「豹牙の背中、落ち着く」

豹牙「……そうかよ」

星羅「うん」

少し沈黙が流れる。

星羅「ねぇ、豹牙」

豹牙「何だ?」

星羅「私がここにいてもいいのかな」

豹牙「……は?」

星羅「だって、私まだ月影のこと全然知らないし」

豹牙「……」

星羅「みんなは昔から一緒なんでしょ?」

豹牙「ああ」

星羅「私だけ途中から来たから……」

豹牙「そんなの関係ねぇだろ」

星羅「……え?」

豹牙「お前がここにいたいなら、いればいい」

星羅「…………」

豹牙「俺らが嫌なら、とっくに追い出してる」

星羅「……そっか」

豹牙「だから、そんな顔すんな」

星羅「どんな顔?」

豹牙「……寂しそうな顔」

私は一瞬、目を丸くした。

そして――。

ぱっと顔を綻ばせる。

星羅「……ありがとう、豹牙!」

満面の笑み。

本当に嬉しそうに。

何の計算もなく、ただ真っ直ぐに笑う。

豹牙「…………」

その瞬間。

胸の奥が――大きく鳴った。

ドクン。

豹牙「……っ」

顔が熱くなる。

まただ。

でも、今までとは違う。

近づかれると顔が赤くなる。

笑われると目を逸らしたくなる。

そんな程度じゃない。

今の笑顔を――。

もう一度見たい。

そう思ってしまった。

豹牙「……お前」

星羅「ん?」

豹牙「……反則だろ」

星羅「何が?」

豹牙「……何でもねぇ」

星羅「変なの!」

また笑う。

豹牙はその笑顔を見ながら、完全に目を奪われていた。