月影に咲く、一輪の華

夜凪が出ていったあとも、私はしばらく星夜に抱きしめられたままだった。

星羅「……星夜」

星夜「ん?」

星羅「もう大丈夫だよ」

星夜「…………」

星羅「ほんとに」

星夜はすぐには離してくれなかった。

私の背中に回された腕に、少しだけ力が入っている。

星羅「……心配してくれてる?」

星夜「当たり前だろ」

星羅「えへへ……」

星夜「笑うな」

星羅「だって嬉しいんだもん」

星夜「……姉ちゃんは、ほんと……」

途中で言葉を止める。

星羅「なに?」

星夜「……何でもねぇ」

まただ。

でも、今は聞かないでおこう。

星羅「ねぇ星夜」

星夜「ん?」

星羅「さっきのこと、みんなには言わないでね」

星夜「……」

星羅「お願い」

星夜「……分かった」

星羅「ありがとう」

私は少しだけ離れて、星夜の顔を見る。

まだ少し青ざめている。

星羅「星夜も怖かったんだよね」

星夜「…………」

星羅「旧校舎」

星夜「……ああ」

星羅「私が鎖見たから……」

星夜「……それだけじゃねぇ」

星羅「え?」

星夜は一度目を伏せた。

星夜「俺も……あの時のこと思い出した」

星羅「……」

星夜「姉ちゃんが鎖に繋がれてるの見て……」

そこで言葉が止まる。

私は何も言わず、星夜の手を握った。

星羅「……もういいよ」

星夜「…………」

星羅「私たち、ちゃんとここにいるから」

星夜「ああ」

星羅「一緒にいる」

星夜「……ああ」

二人で手を握る。