「おつかれ」
そう微笑んで去ろうとしたら、「あのさ」と呼び止められた。
「せっかく応援来てくれたのに、勝てなくてごめん」
振り返ると、神妙な顔をしていた。
「え? いや……」
チャンスで代打を送られたとき、彼は打てなかったけれど。
そのせいで負けたわけでは、ないと思う。
でも、何て言えばいいかわからなくて、少し考えた。
「応援、楽しかったよ。来年も、がんばって」
「……っ」
「それじゃあ……」
新山は、まだ何か言いたそうだったけれど。
私は、足早にその場を去った。
彼と恋人でいられないと気づいたのは、彼から初めてキスをされたとき。
すごく嬉しそうにしてくれたのを見て、同じ気持ちになれないことが苦しかったのだ。
私は――慎之介を、心苦しくさせていないだろうか。
時折、そう不安になる。



