そんなことを思い出して、ぼうっとしていたら。
踊り場のほうから響いてくる声をキャッチした。
これは――たぶん、蓮沼くんだ。
(慎、いるかな……!)
今日は早速、誕生日にもらったTシャツを着ているのだ。
じっ、と見つめていると。
角を曲がってきた四人の集団に——彼がいた。
目が、合う。
その顔に、静かな動揺が見えた。
私のTシャツに、気づいたからだろう。
「あ。藤沢さん、おつかれー」
蓮沼くんが挨拶してくれる。
自然な笑顔をつくりながら「おつかれ〜」と返した。
「それ、チアの衣装?」
蓮沼くんに、尋ねられる。
「うん。明日から行くんだ」
そんな会話をしながらも。
私の意識は、Tシャツ姿にドギマギしているであろう慎之介に全集中している。
「野球部、勝ち進んでるもんな。明日もめっちゃ暑いらしいから、気をつけて!」
「ありがとー」
去っていく彼らに、静かに手を振ると。
慎之介は、小さく会釈をしてきた。
(なにあの、懸命な他人行儀……かわいいい……)
内心で悶えまくる。
今度は、クラスの文化祭準備が被る日に着ていこうと、心に決めるのだった。



