(…………くそ……)
好きとも言わない、誕生日の願いも聞いてやらない。
そんな腑抜けが、ちゃっかり手だけは出すなんて、許されないことだ。
頭の中でお経のようなものを唱え、必死に煩悩を追い払う。
「ねえ、慎」
「……ん」
「『キヨシ』って、いつ出てくるの」
不意に、尋ねられる。
「十七巻」
「えー。まだ、結構先だね」
彼女は今、九巻だ。
独り言のように「絶対、夏休み中にそこまでいってやる……」などと、ぶつぶつ言っている。
(俺の好きなもの、知ろうとしてくれてんだよな)
それなのに、俺は。
少しでも長く、追いかけてもらいたいから、なんてずるい理由で。
恥ずかしいから、なんて格好悪い理由で。
彼女の願いに、全然応えられていない。
嫌気が、ささないだろうか。



