タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。

 ◇

 藤沢と話す機会をつかめないまま、午前中が終わろうとしていた。

 廊下の水道で手を洗っていると。

「よっ」

 隣に並んできた人物に、声をかけられた。

「……おー」

 冷水でバシャバシャと無造作に顔を洗い始めたのは、去年同じクラスだった新山(にいやま)だ。

「南、サッカーだったよな? どうだった?」

「一回戦負け」

「マジか」

「新山は、ソフトボールだよな。いいとこまでいってなかったっけ」

 こいつは、野球部だ。

「それがさ。準々決勝までいったのに、部活の先輩のクラスに負けた」

 肩にかけた長タオルで顔を拭きながら、「くやしー」とこぼしている。

「…………」

 相変わらず、坊主なのにイケメンだ。

 そのとき、後ろを、藤沢とクラスの女子たちが通った。
 もうすぐ、女子バレーの試合が始まるらしい。

 そちらを見ないまま、新山は言った。


「南さ。『ひな子』と同じクラスだったよな?」