タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。

 ◇

 朝、下駄箱に着くと、その背中が見えた。

 運よく、周りには誰もいない。
 歩みを速め、声をかけた。

「……おはよ」

 ゆっくりと振り返った彼女は。
 俺の姿を認めると、綺麗な微笑みをつくった。


「おはよう。『南くん』」


(…………)


「……あのさ。昨日、返事なかったけど……怒ってたりする?」

「えっ? ううん! 怒ってないよ? 寝落ちしちゃっただけ」

 笑顔が、嘘くさい。

「……感じ悪い言い方して、ごめん」

「だから、大丈夫だってー」

 パタン、と下駄箱の扉を閉めて。
 上履きをトントン、と履きながら「でも、確認なんだけど」と、続けた。


「好きな子できたら、ちゃんと教えてね? 私たち、別れなきゃいけないしー」


 そう言って、去ろうとする。


 肝が冷えた。