「『卒業旅行楽しみだね』くらい、ふつうでしょ」
「……言い方が生々しすぎるんだよっ」
「それは、聞く側の問題じゃない?」
「…………」
図星を突かれた表情が、可愛すぎて。
あはは、と笑い声が漏れてしまう。
慎之介は息を吐きながら、結び終えたネクタイの形を整えてくれた。
「……ハイ。どうぞ」
「ありがと」
そっと手首を上げ、眺める。
三年間、彼の胸元にあった、深いオレンジ色のネクタイ。
ゆとりをもたせながらも、しっかりと結んでくれていた。
視線が交差し、小さく微笑みあう。
公認の恋人になっても、なお。
こんなふうに、私たちの秘密は――まだまだ尽きそうにない。
―― 完 ――



