「あずさ、藤沢さん。やっほー」
嬉しそうに挨拶してくる、蓮沼くん。
「……なに?」
穏やかさと照れ隠しが混ざったような声色の、慎之介。
私は、笑顔で手のひらを差し出した。
「ネクタイ、ちょうだい?」
この学校では、卒業式に好きな男の子からネクタイをもらうのがお決まりだ。
彼も思い出したように「ああ」と呟き、するりと首元のネクタイを解いてくれた。
私は、くるりと背を向ける。
そして。
「ネクタイで、ポニーテールにして?」
長く伸ばした髪を、両手で持ち上げようとした。
「ちょ、ちょ、ちょ……っ!」
それを見た慎之介は慌てて私の腕を掴み、教室の出入り口から、廊下の柱の陰へと引っ張っていった。
背後から、あずさの「またひな子の悪戯か」という呆れ笑いが聞こえた。



