私はしばらく、傘を抱えたまま突っ立っていた。
それから、ハッとして追いかけた。
階段の途中で追いつき、前にまわって顔を覗き込む。
「……ありがとうっ!」
「わっ。ビックリしたー」
彼は肩を跳ねさせ、目を丸くしていた。
「……驚かせんなよ」
そのときの顔が、私の中の変な扉を開けた。
そしてすぐに、隣の席になり、話すことが増えた。
教科書を忘れたから見せてほしいとお願いしたら、照れながら机を寄せてくれたり。
女の子が投げたボールが、背中に直撃したのに、『へーき。ちょうど凝ってたし』とか言っていたり。
そんな姿を目にするうち、気づいたら、夢中になっていたのだ。



