タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。


「…………」

 じっと見下ろす。
 彼女は緩んだ口元に手を添えながら「わあ……」などと言って、ぱちぱちと瞬きをしている。

「……なんでそんなに、余裕なんだよ」

 俺がそう言うと、見つめ返してきた。

「だから……余裕じゃないよ」

「…………」

「触って……たしかめてみて」

「…………」

 言われたとおり。
 そっと、慎重に、手のひらを乗せてみた。

 すると。

 制服のセーター越しでも、わかる。
 速い心臓の動きを、たしかに感じた。

「……ほんとだ」

 そう呟くと。
 彼女は恥ずかしそうに、ぱっと目を逸らした。


 その顔が、俺の中の変な扉を開けた。


「…………」

「…………」

「……慎の、ヘンタイ」

「……うつしてきたのは、誰だよ」

 母が帰ってきた音がして、また慌てて離れるまで。
 俺たちはその扉の少し先を、こっそりとたしかめた。