タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。


 そんなことを考えていたら。
 細めた目で「なんで、黙るの」と見られた。

「あ、いや」

「…………」
 
「タイプとか、今はどうでもいいっていうか……」

「へーえ?」

 慌ててフォローするも、不満げな横顔。

「……藤沢」

「…………」

 返事はない。

(やっぱり、この呼び方じゃダメか……)

 息を吸い込んで、腹に力を入れた。


「俺は……タイプとかじゃなくて、ひな子が好き」


 彼女は、バッとこちらを見る。

「…………っ!」

 フルフルと、少しのあいだ耐えていたあと。

 勢いよく抱きついてきた。
 いや、もはや飛びついてきた。

「慎、ズルイっ!」

「……え?」

「そんなひと言でキュンキュンさせてさあっ!」

「…………」

 それを言うなら、笑顔ひとつで俺を骨抜きにする彼女も、十分ズルイのだけれど。

 なんにせよ、伝わってよかった。

 俺のあぐらの上にちょこんと座った彼女は、ご機嫌に漫画の続きへ戻った。

(あー……)

 目の前の髪から漂う香りに酔わないよう、必死で別のどうでもいいことを考えた。