タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。


 そのまま夢中になって、何度かしてしまうものの。
 途中で、下の物音にハッとする。

 母が、リビングにいるのだ。

「えっと……続きでも読もうかな、っと……」

 藤沢は、ローテーブルの上にある漫画へ手を伸ばした。

「あ……うん」

 俺も、ぎこちない動きで、少しだけ距離をとった。

 彼女が読み始めたのは、あのバレー漫画。
 最近は教室でも貸し借りしているから、だいぶ進んでいる。
 ついに次が、最新巻だ。

 初めは俺の好きなものを知ろうとして手に取ってくれたのかもしれないけれど。
 今では彼女も、ストーリーの続きを気にしている。

 しかし、その途中。

「……ていうかさあっ」

 不満げな声を出され、肩がピクッと跳ねる。

「慎って、こういう子がタイプなんでしょ?」

 彼女が指差しているのは。
 キヨシの想い人、『ユミ』だった。

「スポーティ、ボブ、爽やか」

「……まだ覚えてんの、それ」

「覚えてます〜」

「…………」


 ――『タイプとは……違うね』


 告白されたとき、焦るあまり口走った失言。
 彼女の中にはまだ、根深く残っているらしい。

 そういえば――あのときも、友達にタイプを聞かれたときも。
 キヨシに影響されていたのか、頭の中にユミが浮かんでいた気もする。