タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。

 ◇

 戻った男子部屋には、誰もいなかった。
 他のやつらは、まだあのまま女子のところにいるのだろう。

 布団に寝転び、スマホを見る。
 説教中に、蓮沼からメッセージが届いていた。

『藤沢さんと抜けたん!?』

(…………)

 涌井に捕まっていたことは、女子部屋に戻った藤沢から聞いただろう。
 スマホはそのまま放り投げた。


 枕に顔を押し当て、考える。


 ――『そろそろ、別れてあげよっか?』


 何度も、頭の中で繰り返される。

(藤沢は、俺と別れたがってる?)

 一瞬、そう思ってしまったけれど。
 きっと違う。

 あの、歪んだ表情。

 藤沢は無理をしてる、と思う。

 俺は――。

 自分の気持ちを、言葉にせず。
 付き合ってることも、内緒にしてほしいと頼んだ。

 最初は『恥ずかしいから』とかいう、しょうもない理由だった。

 ただ、結局は――。

 公表して本当の『恋人』になることが、こわかった。

 別れへのカウントダウンが、始まる気がした。
 ダメになったときの傷が、深くなる気がした。

『期限』も『秘密』も、逃げ道でしかなかった。

 でも。
 そのせいで、今、壊れそうになっている。
 彼女を傷つけている。
 笑いかけてもらえなくなっている。

(それでいいのかよ?)

 そう、自分に問いかけたら。

 すっと、決められた。

 こわいという気持ちは、何ひとつなくなっていないけれど。
 それを持ったままでも、いいと思えた。