「え……?」
新山は、困惑している。
「え、なに笑ってんの……」
「あっ……ごめん」
笑っていい場面じゃない、と我に返る。
「私と、そっくりだったから……」
八か月前の、バレンタインデー。
――『好きな子ができるまででいいから、付き合ってください!』
慎之介にそう言って、恋人になってもらった。
自分が言われる側になってみて。
改めてめちゃくちゃなお願いだったな、とわかる。
「……なにが?」
「あ、ごめん。こっちの話……」
そこで――階段を下りてくる足音が聞こえた。
それに気づいた新山は、くるっと背を向ける。
「じゃあ……考えといて」
「え、あの」
引き留めようとしたものの。
新山は気恥ずかしそうに、そのまま去っていってしまった。
そのあと、すぐ。
階段ですれ違った『足音の主』に、新山が軽く声をかけるのが聞こえた。
現れたのは。
「…………」
「…………」
不機嫌そうな瞳をした――慎之介だった。



