「推しといえばさ」
男子のひとりが、あずさを見る。
「立花さん、涌井推しとか言ってるじゃん。推しって、何がいいの」
「えっ」
あずさの肩が、わずかに跳ねた。
同時に、蓮沼くんもなんとなく視線を泳がせる。
「ええっと……」
あずさは、少し考えてから。
「推しは……ただ、楽しい」
「楽しい?」
「うん。失恋とかも、ないし」
俯きながら、そう言った。
あずさの言葉を聞いた若ちゃんは、「なるほどね……」と呟いていた。
その横顔を見て、ある考えがよぎる。
若ちゃんも、慎之介のことを、『推し』として『見ようとしている』だったら。
あえて、そうしていたら――。
(…………)
ネガティブな妄想が、エスカレートしている。
そんな自分が、嫌で。
なんだか、居た堪れなくなってしまった。



