タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。


「……へ?」

「でも、普通の女の子でもあったってことじゃない?」

「…………」

(『普通の、女の子』……)

「南くんも、恥ずかしいのか何なのかは知らないけど……言えないだけで、ひな子のこと好きだとは思うけどさ」

「…………」

「それでも普通は、言葉でもほしいでしょ。気持ちなんて、目に見えないし。態度で受け取れる分は、限界があるっていうか」

 ざらざらした砂をいじりながら、あずさは続ける。

「好きだから、イライラしてるんでしょ? ひな子、普通じゃん。イライラするほど好きってことで、いいんじゃない?」

「…………」

 涌井が言っていたこととも、近いように感じた。

 醜い感情も、『好き』から生まれるものだから。
 誰かに恋をするなら、受け入れるしかない。

 頭では、わかる。

 でも――受け入れたくなくて。

 イライラしている自分は、可愛くない。
 そんな自分を、私自身が好きになれない。

 そして、何より。

 彼が、重くて面倒くさい私に、疲れてしまったら。
 私に『好き』と言ってくれるどころか、他の楽しくて明るい子を好きになってしまうかもしれない。

 そう考えただけで、苦しくて。


(普通なんかじゃなくて、ヘンタイのままで、よかったのに)


 ぽろっと落ちた涙が、砂浜へ静かに染みていった。