タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。


「……決めつけたら失礼じゃないですか?」

「ああ。すみません」

 あっさり謝ってきた。

「…………」

 イライラしているからって、つい先生にまで刺々しくしてしまった。
 しかも、あずさのことなのに、勝手に。

 砂浜に、視線を落としていたら。


「僕も高校生の頃、『推し』がいましたね」


 突然、そんな話を始められた。

「え」

 驚いて、顔を上げる。

「美術の先生でした。綺麗な方で」

「へえ……」

「僕みたいな陰の人間にも、分け隔てなく優しくしてくださって」

「…………」

 高校生の涌井。
 不思議と、イメージできた。

「自分ではわりと『恋』のつもりでした」

「……それで?」

「ちょうど僕が卒業するとき、ご結婚されました」

「えっ。それは……ショックでしたね」

「いえ。それほど」

「そうなんですか?」

「『おめでとうございます』って、思うだけでした」

「…………」

 授業のときとなんら変わらず、淡々としている。