タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。

 ◇

 バスで二時間ほどかけて向かった、有名な水族館。
 巨大な水槽の前で、みんなで写真を撮ったりして、楽しんだ。

 そして、水族館を出ると、班ごとに大型タクシーへ乗り込んだ。
 ここからは、それぞれの班で決めた場所を巡るのだ。

「おー! 海見えた! 青っ!」

 近藤くんが、車内でテンションを上げている。

 みんなで今後の予定を相談していたら。
 スマホが、震えた。


『さっき、薬飲んでなかった?』


 慎之介からのメッセージだった。

 たしかに、バスの中で鎮痛剤を飲んだ。
 席が近かったから、見えていたのかもしれない。

『頭とおなかが、ちょっと痛いだけだよ』

 すぐに、既読がつく。

『大丈夫なの?』

『大丈夫だよ』

 さらりと返したものの。
 その後も『パイナップル公園で何食べるの』とか『城は何時ごろ行くの』とか、何気ない質問が止まらない。

 明らかに普段より、話題を振ってくれている。

(…………)

 慎之介からの連絡は、どんな他愛のないものでも、素直に嬉しい。

 でも、今は。

 ――『俺らの好きなバンド』

 あの言葉が、胸に刺さったままだった。

 彼の好きなものを教えてもらって、彼と『好き』が重なって、心から嬉しかったあの瞬間。
 それが、上書きされてしまったように感じた。

 だから。

『じゃあ、班行動楽しもうね』

 そう返して、スマホをしまった。

 小さく、息を吐く。
 ガラス窓の向こう、青く透き通る海が、やけに目に沁みた。