しばらく経った、そのとき。
「……ふがっ!」
前のほうから、妙な音がした。
一度だけの、軽いいびきのような音。
「…………」
数秒の沈黙のあと。
「えっ!? 私、今……ブタになってた!?」
大慌ての、若ちゃんの声が飛んできた。
「ぶはっ!」
周囲から、一斉に笑いが起きる。
「ねえ、なってた!?」
そう、確かめていた。
通路を挟んで隣にいた、慎之介にも。
「なってた、なってた」
彼は優しい笑顔で、返している。
「忘れて! 今すぐ!」
「はは」
(…………)
明るくてさっぱりしてる、若ちゃん。
(ああいう子と付き合ったら、ただ、楽しいだろうなあ)
思わず、あずさの肩にもたれた。
「ん? どしたん?」
もぐもぐと食べ進めながら、聞いてくる。
「……私、今日から『あれ』になっちゃってさー」
「げ。それは、ついてないねー。ヨシヨシ」
「…………」
撫でてくれたのは、さっきまでグミをべたべた触っていたほうの手だったけれど。
今はただ、彼女の優しさに甘えたくなってしまった。



