「男の子と、あんな時間まで出かけるなんて」
「…………」
「ひなちゃんは『好き』って言ってたけど。向こうはひなちゃんのこと、大切に想っては、ないでしょうね」
喉の奥が、カッと熱くなる。
言い合う声が聞こえたからか、二階から父が下りてきた。
母はその姿を、見ようともしない。
その瞬間、感情の糸が、ぷつりと切れた。
「……決めつけないで! 悪く言わないでっ!」
大声を出した私に、両親とも驚いた反応をみせる。
私がこんなふうに声を荒らげたことなんて、今まで一度もなかったから。
「慎は、やさしいよ! 二人なんかより、ずっと私の気持ち、考えてくれてる……!」
家族がこうなった原因をつくった父。
それをただ悲観し、父とは向き合わず、家から逃げたり、私にぶつけたりするだけの母。
私にはもう、キャパオーバーだった。
「……っ」
階段に突っ立ったままの父に「どいてっ!」と叫びながら、駆け上がった。
自室に飛び込み、バタンッ、と大きな音を立てて扉を閉める。
扉に背を預けながら。
「……うーっ……」
堪えていた涙が、溢れ出した。



