「……私が、一方的に好きで。今日も、無理にお願いして、付き合ってもらっただけだし」
(え……)
「だから……そういうこと言わないで!」
今にも、泣き出しそうな顔。
(誘ったの……俺なのに)
否定したくなるものの。
すがるような瞳で、それを拒んでいるように感じた。
「もういいから。入りなさい」
母親は、諦めたように息を吐いた。
藤沢が、俺を見る。
「……ありがとね。気をつけて帰って」
「……うん」
二人が玄関に入り、ドアが閉まった。
(…………)
ゆっくりと踵を返す。
彼女が俺の家に来るとき、いつも使っているバス停へ向かった。
二十分後に来るバスを、待ちながら。
彼女の言葉を、思い出していた。
『私が、一方的に好きで』
否定、したかった。
なんだか俺は、ああやって彼女に嘘をつかせて、守られてばかりいる気がする。
ライブの余韻は、もうほとんど残っていなかった。



