彼女の口元が、緩む。
「慎って……なぜか外でのほうが、大胆だよねえ……」
「……周りに人いないか、確認したし」
くっついたまま、小さく笑っていた。
(これ……史上最高にいい雰囲気じゃないか?)
今なら、言える。
今日も何度も感じた、この気持ちを――。
拳をぐっと握り、口を開くものの。
「…………」
「……藤沢」
「…………」
「……出ないの?」
振動が、二人のあいだに響いていた。
「……うん」
短く答えた藤沢は、ポシェットからスマホを取り出すと。
画面も見ないまま、切った。
一瞬だけ見えたのは。
『お母さん』からの、何件もの不在着信。



