「好きになったきっかけ、お兄さんなんだよね?」
「うん。兄貴が高校生で、俺が小学生のときかな。『おまえもこれ聴いて、いい男になれ!』とか言って、CD十枚くらい渡された」
「なにそれ。お兄さんっぽい」
藤沢は笑った。
そして。
「慎の家族って、素敵だよね。いいなあ」
そう、呟いた。
「…………」
その言い方が、少しだけ引っかかった。
夕飯をひとりで食べていたり。
前に『うちの親は仲が悪い』と聞いたことがあったから。
「……あのさ」
「うん?」
「家のこと、何か悩んだりしてない?」
「…………」
一瞬、その笑顔が強張るものの。
すぐに和らげられた。
「ありがと。大丈夫だよ」
「……そっか」
それ以上は、聞かなかった。



