藤沢を送っていこうと、一階へ下りた。
「お邪魔しました……っ!」
リビングに顔を出し、彼女がぺこりと頭を下げる。
ソファに寝転びながらテレビを観ていた兄は「またね〜ひな子ちゃん!」と応えた。
母は、キッチンで夕飯の支度をしている。
普段なら「気をつけてね」くらいで終わるのだが、今日は俺たちを見ると「あ」と手を止めた。
「藤沢さん、ごはん食べていかない?」
「……えっ」
「え?」
俺と藤沢の声が重なる。
「藤沢さんのおうちがよかったら、だけど。お姉ちゃんが急に帰ってこないって言うから、一人分余るのよ。早く言ってくれたらいいのに、もう……」
おかずを皿に盛りつけながら、ぶつぶつ文句を言っている。
藤沢は「えっと……」と、一瞬だけ迷ったあと。
「今日は、両親ともいなくて。ひとりで食べる予定だったので」
(……え)
知らなかった。
「お言葉に甘えても……いいでしょうか」
「よかった。じゃあ、これ運んでもらっていい?」
母は、そう言うや否や。
大皿をぐいっと差し出してきた。
(遠慮ねーな……)
やや焦るものの。
「あ、はいっ!」
藤沢は、少し嬉しそうだった。



