「ひな子ちゃん! 来てたんだね!」
元気よく現れたのは、慎之介のお兄さんだった。
「あっ……お邪魔してます」
「いえいえ! 俺は仕事が早上がりで、夕飯食べにきたんだー。……って、ん?」
私たちを、交互に見る。
「喧嘩でもしてた?」
「…………」
「…………」
何も言えないでいると。
「……してない」
慎之介が、小さく答えた。
「あ、そう?」
お兄さんは、ククッと肩を揺らしていた。
「まあいいや。慎之介、これいる?」
「なに?」
差し出されたのは、二枚の紙。
それを受け取った慎之介は、数秒後、「えっ!?」と大きな声を上げた。
「当てたの!?」
「おう。ただ、仕事で行けなくなっちゃってさ。だから、おまえにやるよ」
「マジ!?」
食い入るように見ている。
思わず、横から覗き込んだ。
それは、見覚えのあるバンド名が書かれたチケット。
たしか、慎之介がお兄さんの影響で好きになったというバンドだ。
以前、曲を聴かせてもらったこともある。
「……いいの?」
「おう」
「やった!!」
さっきまでの空気が嘘みたいに、慎之介の顔が明るくなる。



